会山行 

創立55周年記念登山(バリエーション) 北穂高岳 滝谷ドーム中央

  

山行期間:2022916日~18

参加者:村村(L)カツ(SL 会計)Mario(写真)  

交通手段:自家用車

天気:16日晴れ 17日晴れのち雨 18日曇り時々晴れのちにわか雨 

行程:

16日】

300相模原発~640沢渡駐車場着 700タクシー乗車~730上高地 800上高地発~850明神~945徳沢~1105横尾1130発~1240本谷橋1300発~1545涸沢小屋着

 

17日】

 100起床~210発~南稜~510北穂-奥穂分岐545発~奥穂方向へ~615稜線からの降り口~715ドーム中央稜取り付き~準備及び先行パーティーの登攀を待つ

745登攀開始

・1ピッチ目Ⅴ- 30m リード村田 

・2ピッチ目 Ⅳ 30m リード勝又 

・3ピッチ目 Ⅲ 50m 岩稜歩き

・4ピッチ目 Ⅳ 30m リード村田

・5ピッチ目 Ⅳ 30m リード小池

1210ドーム頭に到達

1300下山開始~1330北穂奥穂分岐~1530涸沢小屋

 

18日】

500起床 740出発~825Sガレ~910本谷橋~1000岩小屋痕10201045横尾11201210徳沢12401335明神~1430上高地~沢渡1530~温泉 夕食~2100相模原着  

 

●山行内容:

16日】

上高地はさわやかに晴れ渡り、西穂高岳や明神岳の連なりが美しい。北アルプスの玄関口に立つとおのずと気持ちが高揚する。3人で横尾を目指す。梓川を横目に平坦な道を歩くこと3時間、横尾に到着。このころには日差しが強く皆汗ばんでいる。本谷橋で休憩し、横尾本谷の清流で体を冷やす。ここからが急登になるため、重いザックが応える。適宜休息しやっとの思いで涸沢小屋に到着する。台風が接近しているため2日目の17日しかアタックのチャンスがないと判断し、涸沢小屋にもう1泊できないか頼むと、キャンセルが生じたようで、連泊できることに。幸先が良い。小屋はコロナ対策で人数制限されていて、各布団の間はベニヤ板で仕切られている。プライベートが保たれ寝るにも、荷物を整理するにも快適だが、もちろん料金は高い。夕飯はサーモンのタルタルソース和えだった。ご飯やみそ汁のお代りは手を挙げれば、スタッフがやってくれる。まるで旅館のようだ。明日のアタックに向けパッキングをしてみると意外にもザックが重く3人とも落胆する。

17日】

 いよいよアタックの日だ。100起床、210に小屋を出発した。月が明るく、ライトを消しても周囲の様子が分かるくらいだった。北穂高岳南稜をひたすら登る。昨日の疲れが残っていてペースは上がらないが、予定の3時間で北穂-奥穂分岐に到着した。タイミング良く空が白み始め、朝焼けに照らされつつ、お弁当の稲荷ずしを食べた。幻想的な雲海を見下ろし「この景色を見るだけで、穂高に来る価値がある」などと口にしてしまうが、これからが本番だ。

 北穂-奥穂の登山道から飛騨側のガレ場を下る。未知の滝谷に足を踏み入れるとなると緊張感が高まる。ガレ場のクライムダウンを繰り返し、しっかりした踏み跡を辿ると懸垂支点を発見。25m懸垂下降しテラス(T2)に降り立つ。「鳥も通わぬ滝谷」と形容されるが本当に鳥のさえずりは聞こえず、その静けさがかえって不気味だった。とうとう岩の取り付きに到着。威圧的な岩が立ちはだかり、更に緊張感と期待が増す。先行パーティーが登攀していたので彼らのルート取りなど観察しながら準備する。

745登攀開始。1ピッチ目は私がリード。「チムニーに入り過ぎないよう」という情報を得ていたが、ホールドが見つからず、やむなくチムニー内部に侵入する。ザックが邪魔になり思うように体を上にあげることができず「このまま敗退したらどうしよう」なんてことが頭をよぎった。しかし根性で少しずつズリ上がっていくと、後半はフットホールドがあり助かった。 

カツ氏も上がってくるが最後の狭いチョックストーンは通過できず、ザックを私が受け取り、なんとか通過できた。Mario氏は私のストック2本を背負ってくれたので、それが岩にひっかかりやすく、更にチムニーに苦しめられた。とっさの判断でアッセンダーを駆使して上がりきった。3人共チムニーにさんざん傷めつけられ、しかも私の新品のアタックザックには穴が開いていた。(泣)しかし一番難しい箇所は通過したのだ。

 2ピッチ目はMario氏リードで計画していたが、息が上がっているので、ここはカツ氏に選手交代。急遽交代したにも関わらず、高度感のあるカンテ、バンドのトラバース、最後の悪いスラブを登りきってくれた。そして笑顔で続く二人をビレイしてくれる。ここぞと言う時に本当に頼りになる存在だ。

 3ピッチ目は岩稜歩きで次のピッチを目指す。

 4ピッチ目は私がリード。事前に知り合いから核心部を抜けるコツを聞いていたが、そこは被っていて、難しそうに見えたが思い切ってトライした。平らな岩の両側を抱きかかえ、すこしずつ両足を上げていくと、上部のガバがとれた。このピッチを抜けられる見通しがついてホッとした。岩の弱点を攻略する、という納得の登攀ができ気持ち良かった。続くMario氏、カツ氏も手ごたえを感じていた様子だ。

いよいよ最終5ピッチ目 ここはもちろんMario氏がリード。「凹角を登り、最後の小ハングを右から越える」とトポ図には書いてあったが、小ハングを左のカンテから見事に上がってしまう。現場で自分の判断を信じる姿勢は素晴らしい。とうとう3人でドームの頭に立った。槍ヶ岳やその奥につづく北アルプスの全ての山が見えた。雲や風もなく最高のコンディションの中、田口さん作成のペナントを掲げ写真撮影。山路Tシャツを着た写真も収める。休息後、曇が出てきたので下山開始。北穂-奥穂分岐を少し下った頃から雨が降り始める。雨具を着ての下山はきつかったが、この後の祝杯を心の支えに頑張る。

 1530涸沢小屋に到着。体を拭いてすっきりしてから、生ビール、もつ煮込みなどで乾杯した。重責を担った緊張感からの解放もあり、3杯も飲んでしまった。

18日】

今日は下山だけなので気楽だ。小屋の朝食をいただき、パッキングして730出発。曇りがちの空だが、時々雲の切れ間に涸沢カールや穂高が見えて、得した気持ちになる。途中雨にやられるが、本谷橋まで来ると逆に日差しが強い。カツ氏が気にしていた、岩小屋跡は道標があり発見できた。実際3人で中に侵入してみたら、人が立てるスペースや3~4人なら寝られる広さがあり驚く。

横尾でMario氏が徳沢でソフトクリームを食べようと提案。それを目標にもう1時間歩く。明神を出ると強い雨が降るが、長く続かず助かった。横尾からの道は横に広いため3人で並び、登攀や小屋の話しなどしながら上高地を目指した。

混雑している河童橋を足早に去り、上高地から沢渡に戻った。温泉でさっぱりした後、山賊揚げ定食やそばセットを食べた。こってりした物が本当にうまい。

 

3日間様々な判断に迫られ、困難にも直面したが、その都度知恵を出し合い、協力し乗り越えられた。練習の苦労もあったので、ドームの頭では感動した。参加できなかったバリエーションメンバー2人にも練習参加や情報提供などで支えてもらい、なんとか目的を達成できて、大きな満足感と楽しさを味わえた。

 

上高地出発 気温は涼しく快適

涸沢小屋着 テラスから涸沢カールを望む 今日はビール我慢(泣)

200から行動開始、稜線で夜明けを迎える

朝焼けと雲海 遠く富士山が見える

懸垂下降で取り付きに向かう

1ピッチ目 皆がこのチムニーに苦しめられた

2ピッチ目 頼りになるカツ氏のクライミング

5ピッチ目 Mario氏が最後に決めてくれた

ミッション達成し、ドーム頭で肩を組み喜びを分かち合う

徳沢でソフトクリーム

合羽姿で河童橋到着 雨に濡れてます