~2008年夏合宿~ 

B班 大キレット(槍平~槍ヶ岳~南岳~槍平)

記 録 工藤
時 期 8月2日(土)~4(月)
参加者 井山(CL)、松本(SL)、森田(写真)、新保(食当)、小林(食当)、工藤(記録)
行 程 2日(土)・・・上溝4:00~相模湖IC5:00~諏訪湖SA6:45~松本IC7:05~安房トンネル8:00~新穂高温泉8:30 
出発9:05~穂高平避難小屋10:30~白出沢出合(11:30)12:00~藤木レリーフ13:45~槍平小屋14:45(幕) 

3日(日)・・・槍平小屋4:30~飛騨乗越8:25~槍ヶ岳山荘(8:40)9:00~槍ヶ岳(9:25)9:35~槍ヶ岳山荘(10:00)10:30~大喰岳(11:05)11:20~中岳11:55~水場(12:15)13:05~南岳小屋14:10(幕)

4日(月)・・・幕4:45~南岳小屋6:20~槍平小屋(9:15)9:55~藤木レリーフ10:45~白出沢出合(12:00)12:25~新穂高温泉14:10~駐車場14:40~温泉・食事16:50~松本IC17:30~諏訪湖SA18:50~相模湖IC20:25~反省会10:05
概要
 梅雨明け10日の天候は安定・・・の予定だったが年々梅雨明けが温暖化の為か早まっている。そう、メインエベントであったの4日(3日目)の天候悪化。引き返す勇気を持って大キレット敗退となった。A班との合流を楽しみにしていたが叶わなかった。

 夏の縦走を初めて経験する私は やはり食事のことが気になっていた。小さいころから私の食欲が無い時は具合が悪い時だった程、食欲が落ちる事はなかったと母が良く話していたことを覚えています。夏8月夏大きな山へ行った際にさすがの直射日光では食欲が落ちてしまうことを知っていたのだ。その頃はまだ日帰り・一泊などでしたので「私って結構 省エネなんだわ!」と軽く勘違い・・・。(早くに人間 省エネ位の食事で丁度良いと気づいていれば・・・)しかし今回は駄目だめ、好きなものだけでも口に入れなきゃと思い色んな方へアドバイスを求めました。中でもモンベルさんからのアドバイスは適格であった。それは「味を散らすこと!」さすがである。「案外甘いものだけを持って行きがちだけど2日も3日もだと 飽きてしまうからね。」と。
また 縦走最中だけの食事に頼らず1週間前から少しだけだが食事調整をとアドバイスをして下さった知人にも感謝したい。何と言っても憧れの大キレットを歩くのだ!と意気込んでいた。

 初日 8月2日 晴れ 諏訪湖のSAでA班のメンバーと何とも偶然に出会ったのだ。見えない"気が引きつけあったのか お互いの幸運を祈って別れた。
8:30深山壮の無料駐車場にはほぼ満車と見えたが早めの出発が功を奏して 1台空いていたと森田さんが笑顔で駐車してきて下さった。8月一週目の土曜日各地から涼しい山へ訪れているのでしょう。上高地だけが賑わっているのかと思いきやこちらも人気スポットだった。
新穂高温泉は独標に登った際に来たことがあったがそこから槍平・槍ヶ岳のコースは初めてでした。左手には笠ヶ岳がそびえる、縦走のザックをズッシリ肩に背負いながらも「登頂した山は岩肌が一層良く見えて良いなぁ」と眺めながら新保さんの後を歩いた。途中 大きくて長い白い網を振りかざし「蝶」を採取している男性4名の「チョウチョ隊」と遭遇した。私は何歳になっても童心を忘れずに好奇心を持っている大の大人に会うと嬉しくなる。なんだかホッとする。
しばらく続く林道は直射日光を避けられたので大分助かった。1時間30分程歩くと穂高平避難小屋があったが想像以上に立派な小屋だった。何人かの登山者が思い思いに休憩していた。                                 
林道は白出沢出合を少し過ぎたとこで終わった。そして藤木レリーフを過ぎた辺りから私の喉は良く渇くようになったが 井山さんへ私の心の叫びが通じたのか休憩を40分間隔にして下さったので直ぐに解決出来た。
藤木レリーフ

 程無くして槍平へ到着。小屋から登山道・テント場・水場・WCも近くて慣れない私にとってはこれが普通かと思いきや 実際には不便を感じるテント場もあるそうだと聞いて今回は良かったと喜んだ。
夕飯は唯一 火を使う食事でしたので温かいものや調理された食事が楽しみだった。松本さんが早速テーブルと椅子を準備して下さり皆でゆっくりと囲んだ。外で食べる食事は本当に美味しい!周囲のテントからも楽しそうな笑い声が聞こえて 前日までのお仕事は完全に忘れた。

まずはカンパーイ!

外で食べる食事は本当に美味しい!


 二日目、8月3日 晴れ。
早朝3時起床 先輩方の無言のテキパキ!に急がないと遅れを取ると必死でシュラフ・マットやザックの中身をパッキング・・・そして外に出た。今日は槍ヶ岳だ!と流行る気持ち、空にはまだお星様。出発前、初体験となる立ったままの行動食での朝食だ。日に日に"山女の卵化となる自分が超面白かった。登山道はヘッドランプを暫く照らして歩いた。(これも初経験) アルプス展望を同じ視線で望める二日目の登山道を高山植物が徐々に迎えてくれていた。昔の貴人の絹傘に例えて付けられたと言う「絹傘草」は見事な開花振りで圧巻であった。放射状に広がる葉事態が花のようなのだがその中心に真っ白で上品な大きな花を付ける・・・。名の通り美しい!
 歩き出して1時間40分を過ぎたころから眼望に西鎌尾根・千状沢乗越が見え 右手に我らが目指す登山道・飛騨乗越だ。振り返れば双六岳・笠ヶ岳などがパア~と広がっていた。
そしてこの目指す槍ヶ岳までの飛騨乗越が見えているだけに長かった~。高度を一歩一歩と上げて来ると槍ヶ岳山荘も徐々に良く見えて来た。目標が見えるとまだ2時間はかかるとは言え 距離感に騙されて頑張れる!背中に背負うザックも二日目で慣れてきた。
 黒百合・白山一花・蝦夷塩窯・青の栂桜・風路・紅花苺・・・お花畑も夏山の醍醐味です。長い長い厳冬期。想像を絶する厳しい世界での生命の強さ。小さく濃い色で短い時間にだけ華を咲かせる 奥ゆかしさ 可憐さに私は思わず足を止めずには居られなくなる。白・黄色・ピンク・青・紫など彩豊かに乱舞するお花畑 本当に感動します。
ようやく乗越を終えたピークからは想像していた通りのご褒美の景観が待っていてくれた。前日の夢でも出てきた槍ヶ岳が直ぐそこにそびえているのだから嬉しかった。
山荘前にて休憩をとるがやはり絵になる槍ヶ岳に誰しも見とれていた。登るルート 下るルート確かめながら・・・。
丁度9時頃 山荘前で会の石田さんが上がって来られるのを見つけて皆で呼ばれていた。7人のパーティの先頭を歩かれて笑顔でこちらへかえされていた。久しぶりに会われるようななんとも感動的なご対面となった。私は初めましてとご挨拶をした。
 間もなくして石田さん方が私たちを頂上へと見送って下さり出発した。リベンジとなる私は実際の岩肌がどうなっているのかチョット楽しみであった。真下から見上げる槍は緊張感があったが口がそれで渇くほどでも無かった。やはり会と出会ってから"岩の練習をしたことが大きな経験と自信となっていることにすごく気づかされた。しかし慎重に!確実に歩いた。写真通りの垂直の梯子の上では井山さんがカメラを構えて待っていましたので笑顔(余裕?)で応えて初登頂を踏むことが出来た。清々しい風が吹き天空を仰ぎ 暫く幸せを噛みしめました。10人程の方々が居たので移動は慎重に歩き360度の景観を写真に残した。会社の仲間が山の写真を是非送って欲しいと頼まれていたので早速この景観を送って驚かせてあげようと思った。出勤後仲間からは 知らない世界への興味 まさかのような世界へ挑んでいるとは・・・と少々興奮気味で話していた。高尾山程度の山を歩いていると思っていたようだ。
想像していた通りのご褒美の景観 槍の山頂、イエ~イ!

 頂上からこれから歩く道が見えていたあそこを目指して明日の大キレットに向けて気持ちを持っていこうとこの時から思っていた。大喰岳・中岳周辺では下界でもお馴染みのタンポポ(深山蒲公英)が咲いていました。高山でも同じ顔つきだからホッする。可愛いですよね。(実際には細かい特徴で分類) それから白い短毛に覆われた高嶺矢筈母子のピンク色も見ました。 本来 白なのですが蕾から咲き始めがピンクなのだ。その貴重な時期に遭遇したのです。小林さんが私の後ろでしたのでいつも私の独り言に相槌して下さったので嬉しかった。
 そして中岳の水場での休憩は最高だった。大雪渓が残りそこでみんなで水を汲んで行くことになっていた。8月下旬までは枯れることなくあるそうだとはネット上でも確認していたが物凄く冷たくて豊富に流れていた。山での水は本当に貴重だと思った。「喉越し最高!」と気が済むまで飲みまくり ハンカチを濡らし手、腕、顔そして身体を拭いたがそれが超冷たいからそれぞれに「ウ~!キャー!ヒィー!ア~!」と歓声があちらこちらから上がっていた。本当苦しいだけが登山ではないですよね。「山は楽しい~!!」  身体中が軽くなったところでペットボトルや水筒においしい水を満タンに入れ約1時間の南岳小屋までを歩いた。常念岳の眺めが良かった・・・。歩きながら次はあの山に登りたいなぁ~なんて考え沢山の山を眺められる良い道だった。
 さぁ 南岳小屋に到着だ。この小屋の向こうには「!大キレット!」と思うと緊張が走った。そしてネットにあったあの看板「~無事に通過される事を祈ります。南岳小屋」をすぐに発見!私も近くに寄り写真を撮った。本当に命を賭けた登山をしているんだという緊張感と まさかここに自分が来れるとは・・・という満足感でしばらく眺めていた。
テント場には何やら石が積み上げられていた。ここは風の通り道のようだ。本当に風がすごくて風力のプロペラが物凄い音をたてて怖い程だった。天候も急にガスってきて明日の天候を不安にさせられた。
南岳小屋に到着。だいぶガスってる

すごい風。風車がすごい音で回り恐い!


 普段の私でしたらテントを張った後の休憩時間に絶対に大キレットの様子を見に行くところだが、まだ会に慣れないところがあったのか 緊張のせいか周囲を散歩することさえの気持ちの余裕がなかった。どの時間から自由時間に使って良いのか 食事の段取り時間など次回からはどんどん聞いて いつもの自分でもっと山の時間を楽しめるように探究していきたいと思う。
 三日目の夜で夏合宿が終わることとは知らず 明日のコースを確認仕合ってザックの軽量化など話し合った。北穂高岳から南岳へのコースを来られた方に話を伺った内容を井山さんが皆さんに教えて下さった。ザックに振られたり ザックのお尻が予想外の岩場でつくのだという。
そこで飲料水も北穂高小屋で補給することにして飲料水は減らすことにした。いよいよだという気持ちが高まった。
夕飯ではカツ丼とサラダを完食!ご飯はやっぱり美味しい!小林さん 新保さん有難うございました。皆さん 水分もアミノバイタル(最強の見方だ)も準備万端で休んだ。夜中ずっと強風は止むことは無かった。皆さんどんな気持ちで休んでいるのか気になったが 無事に通過出来ることをひたすら祈りながら休んだ。

 三日目 8月4日 雨 3時起床後 朝食と温かいコーヒーやお茶を皆さんと取って明るくなるのを待ってからテントをたたんだ。少し雨が降っていた為一層にテントが濡れていた。ガスで視界4Mも無かったと思います。まずは小屋に入って天候の回復を待つが一向に風 雨止まず小屋から出る方々は皆 鑓平へ下りる方ばかり小屋に掲示してある天気予報を見つけると「前線通過・・・午前中中心に雨又は 雷雨。」とありこのまま待っていても回復兆し無し。その旨井山さんへ報告 井山さんと松本さんと森田さんとで緊急会議だ。最終結論「敗退」と決まり下山となった。私たちは行く気満々でウエストポーチも帽子も邪魔と思うものはザックへしまっていた。そんな中でのまさかの敗退・・・更に下山して家路。皆さんは静かに受け止めていた。私の胸中はこの天候でしたから理解はできましたが納得出来なくていつまでも 嫌だ・・と泣きそうだった。今回当てていた休暇も普段の連休とは異なっていたこともあって悔しさ倍増でしたが 展示されていた大キレットに40年架かっていたという梯子と絡み合い別れを惜しみつつ後にした。
 そのエスケープルート南岳新道は 「これからめちゃくちゃ急な下りのはじまりです。」と看板にあったように本当に荒れた新道だった。途中南岳小屋さん設置の救急箱があり気遣いに温かくなった。天候が悪いので岩場・木道・木の根っこ・土などで思い切って歩けない中 やせ我慢してストックなしで3時間の下りを歩いた私。気づいたら内腿からのレインコートは泥だらけ!で大笑いだった。長い下りがようやく終わり槍平小屋に到着後 なんとかA班へ連絡をと井山さんや森田さん方がされていたが繋がらなかったようだった。30分程の休憩を取って新穂高温泉迄の同じ道を歩いた。
 メインであった大キレットが敗退となり残念でなりませんが また近いうちに出来れば縦走をして経験を積みたいと思います。皆さん有難うございました。 
大キレットに40年間架かっていた梯子 雨具は泥だらけ!