黒部峡谷「下ノ廊下」


記 録: 月野
期 間: 平成19年10月13日(土)~15日(月)
参加者:貴堂(CL・装備・会計)、川野(SL)、月野(記録)、小林(食当)
行 程: ◇10月13日 八王子0:40==5:08信濃大町(タクシー)扇沢駅7:30==7:45黒部ダム8:00---内蔵助谷出合---黒部
  別山谷出合---十字峡---17:00阿曽原温泉小屋テント場
  ◇10月14日 阿曽原温泉小屋テント場6:00---オリオ谷---11:50欅平駅12:00---13:00祖母谷温泉テント場
  ◇10月15日 祖母谷温泉テント場6:40---欅平駅9:16==宇奈月---宇奈月温泉11:03==新魚津---魚津12:09==
  越後湯沢14:03==15:44新宿==相模原
概算費用:相模原~信濃大町(快速ムーライト信州指定席)=4,310円、信濃大町~扇沢 タクシー代=5,200円、扇沢
  ~黒部ダム(含む荷物代)=1,710円、
  欅平~新宿(特急はくたか、新幹線Maxとき)=12,860円、新宿~相模原=520円、阿曽原温泉幕場代/一人
  =500円、祖母谷温泉幕場代/一人=1,000円、共食・他/一人=約3,200円 
  一人当たりの概算金額=25,400円

10月13日(土)晴れ
 快速ムーンライト信州81号は八王子駅を0時40分に発車、30分前に参加者4人がほぼ同じ時刻に集合した。登山者
はちらほらと見受けられるが、それほど多いとはいえない。定刻の0時40分に八王子駅を発車した列車は、座席指定で
ほぼ全席がふさがっていたが、信濃大町に着いた頃には3分の2ほどの乗客は途中で既に降りたようだった。
 未だ空けやらぬ空の下、信濃大町へ定刻の5時8分に到着した。タクシーは4人分のバス代を払えば扇沢まで行ってく
れるらしい。一番のトロリーバスが出る7時30分にはまだ時間が有るので、ゆっくり身支度をしてから扇沢駅へ向かっ
た。扇沢駅はキップ売り場に既に長蛇の列、貴堂氏の機転で2階の改札口には早く並んだ方が良いとのことで、キップ
購入組と改札口に並ぶ組に分かれた。キップ購入組が戻る頃には、2階の改札口前はかなりの人が並んでいた。乗車
したトロリーバスは、満員の状態で黒部ダムへと出発した。
 黒部ダム駅でバスを降り地下道を真っ直ぐ進み、「旧日電歩道・仙人ダム方面」の案内板に従い進むと車道脇の広
場に出る。8時、右の方からダケカンバの林の中を黒部ダムの下へ向かう。黒部ダムを下から見るのは初めてで、そ
の雄大な景観に圧倒される。河原で仮橋を渡り、左岸へ出てからしばらくは河原の道を歩いた。今日は、およそ20数キ
ロの道のり、午後5時までに到着したいねと、リーダーから告げられる。河原の道から離れ、しばらく進むと内蔵助谷出
合に到着した、9時20分。こんなに大勢の人が下ノ廊下を歩くんだろうかと思うほどで、紅葉のシーズンはさすが人気ス
ポットと感心した。


 登山道は徐々に黒部川を下に見下ろすようになり、黒部峡谷のエメラルド色の川面がはるか下で朝日に輝いてい
た。対岸はほぼ垂直な壁が深く谷を刻み、その美しさは自然が作り出した芸術品である。今年は気温が異常に高く、
紅葉は残念ながら殆ど見られない。あと一週間もすれば見られるのだろうが、黒部の冬は早いので、今年は微妙かも
しれない。
 砂利まじりの道と、岩の壁をコの字型に削った道とが有るようだ。また、所々には丸太を3本ほど束ねて、岩壁の斜面
を通るような部分も有る。岩の斜面には左手でちょうどつかめる位置に鉄製のワイヤーが張ってある。足元の丸太の
すき間から遥か下を見ると、黒部川が白い飛まつを上げて激しく流れている。下ノ廊下は黒部ダムから仙人ダムまでを
旧日電歩道と言い、仙人ダムから欅平までは水平歩道と言われている。かつて黒四ダムを築くために作られた作業道
だと言う。そのお陰で、今こうして黒部の奥深くを歩くことができるのである。


 ほどなくして右手前方に新越ノ滝が見えてきた。かなりの落差があるようだ。左の斜面は黒部の魔神と言われる大タ
テガビンの南東壁で、黒部三大岩壁である。11時40分、黒部別山出合に到着。大勢の人がここで休憩をとっていた。こ
こから先、核心部の白竜峡に差し掛かる頃だ。最も両岸が狭まった峡谷は、一段とその流れが激しくなり、黒部川は遥
か下を流れている。例年であれば、このあたりの登山道にはスノーブリッジや残雪が多く残っており、歩行に苦労を強
いられる場所であるが、今年はその雪も全く残っていない。景観に見とれていたりすることは禁物で、注意深く歩かなけ
ればならない。


 十字峡に到着13時30分。ここにはわずかの広場があり、ビバークができるようで、焚き火跡が残っていた。テントを3
~4張は張れそうだ。この広場から踏み跡を辿り、少し下に下りることができ、一枚岩の上に出ると十字峡の迫力を間
近に見ることができる。剣沢と棒小屋沢が黒部川に流れ込み、十文字のように見えることから名づけられたとか。


しばしその荘厳さに見とれたあと、吊り橋を渡り剣沢を越える。半月峡、S字峡を過ぎ、右の対岸に黒四発電所の送電
線が出ているトンネルが2ツ見えてきた。このトンネル奥深くには黒四発電所が有るらしい。間も無くして仙人ダムに到
着した。15時50分である。関電宿舎の構内から高熱遂道を通って人見平から30分ほどの登りが有り、阿曽原温泉への
下りに掛かる。小屋の青い屋根がようやく見えてきた。小屋到着は計画通りの午後5時であった。
 誠に残念ながら、露天風呂は修理中とのことで使用ができず、沸かし湯が準備されていた。暗くなってきた中で、テン
トの準備、小林さん準備による食事でお腹を充分に満たし、しばしの歓談後就寝した。今夜のメニューはレトルトカレ
ー、生野菜のサラダ、ゴーヤ・スープであったが、生野菜はとても嬉しかった。空模様は明日も好天が期待できそうだ。

10月14日(日)晴れ
 4時20分起床。テントの外では早立ちの人達でかなり賑やか。パンときゅうりにスープの朝食をすませ、6時出発。今
日は昨日よりも距離が短いので余裕の行動だ。8時にオリオ谷へ到着。綺麗な水が流れており、水場となっている。こ
の辺りからは、岩壁をコの字型に削った道となり、黒部川からも100mは有ろうかと言う高さになっている。やがて欅平
の駅舎が遠くに見える地点に到達した。大太鼓と言う地点だ。右手には奥鐘山が見えてきた。黒部三大岩壁の一つ
で、黒部の怪人と言われる西壁が白く日の光を反射していた。クライマーのメッカとのことであるが、今日はそれらしき
人の姿は無かった。


 150mのトンネルに差し掛かった。9時20分である。中は真っ暗だし、所々水溜りも有るのでヘッドライトを着けて進
む。トンネルを抜けるとしばらく水平歩道が続き、2つ目の鉄塔を回り込むとやがて急な下り坂になる。ここを下りきれ
ば欅平駅である。11時50分、欅平駅に到着。大勢の観光客が訪れているが紅葉は殆ど見られない。ここから1時間も
奥に入れば祖母谷温泉だ。温泉までの道は工事中となっており、通過できるのは登山者のみで、ヘルメット着用と表示
されていた。祖母谷温泉到着13時。テントの準備をして、付近を散策。小屋の先、河原に下りるとあちこちから湯気が
立っている。祖母谷地獄と言うところで、温泉小屋にはここから温泉が引かれている。河原を掘ると天然の露天風呂に
なるが、使用禁止の立て看板が立っていた。
 小屋に帰り、露天風呂にゆっくりと浸かる。しばし至福の時間を楽しんだ。二日間の疲れも取れ大満足。夕日を背に
受け、まだ日も高い中で乾杯。今日の夕食メニューは五目ちらしに高野豆腐、それに味噌汁、お腹一杯充分に頂い
た。温泉で疲れが癒されたようで、気持ちよく眠りについた。

10月15日(月)晴れ
 5時起床。朝食のメニューは雑炊に味噌汁、昆布の佃煮にきゅうりのQちゃん、毎回毎回小林さんの手際よい準備で
おいしく食事が頂けました。少し早めであるが6時40分に帰路に就いた。欅平駅9時16分のトロッコ電車で宇奈月へ向
かう。トロッコ電車はほぼ満員の乗客で、車内は大変な賑やかさだった。帰りの時間はそれぞれの接続も効率的で、宇
奈月温泉から新魚津へ、魚津から越後湯沢までは特急はくたか11号、越後湯沢からは新幹線Maxときで大宮まで、大
宮から湘南新宿ラインで新宿へと順調に進んだ。
 夏合宿に続いての黒部の旅であった。車中では来年は黒部第3弾かななどと、山談義におおいに花が咲き、紅葉は
残念ながら見られなかったものの、良いお天気に恵まれた楽しい山旅であった。今回、一緒に旅を共にした仲間の皆
さん、そしてリーダー、お疲れ様でした。また、今年来られなかった皆さん、来年は是非来て下さいね。黒部は本当に素
晴らしいですよ。