北穂高岳 東稜

記録者: 川野

 

参加者: 古閑、井山、川野

 

東稜は初級下のコースとはいえ、本チャンは初めての私であったが、何故か特に不安を感じることもなく出発できた。

涸沢小屋の脇から急な登りを1時間余で、右手に多量の大石を投げ散らしたような(モレーン)北穂沢カールの端に出た。良く見ると突き出た三角状の石に赤テープが巻かれていたので、ここが分岐だと直ぐ分かった。ゴロゴロの石の上で朝食をしながらA班と別れる。すると2人パーティが目の前を北穂沢のカールへと入っていった。食事を終えカールの広いガレ場をトラバースにかかると、先行パーティが見え、最低コルへのルンゼ辺りを登っていたのでルートの方向が確認できた。

東稜の取り付きを定め、浮き石に注意しながらやや左上ぎみにカールをトラバースしていき 草付きの岩との境目から取り付いた。急なグズグズのガレ沢を慎重に登る。チョット触ると崩 れ落ちるガレ石や砂礫の斜面には気を遣った。ガレ石の落下が懸念されたのでトップの私 は方向を変えながら登り、また出きるだけ稜の根元や草付きを選んで登った。ガ イ ドブック には最初のガレ沢を詰めても良いとあったが、トラバースして右側の壁に取り付 いた。 ルー トファインデングしながら登り易そうな箇所を選んで攀じ登り稜線に出た。最低 コル?いや 違 うな!右へそれないで最初のガレ沢(ガリーとかルンゼと言えばカッコ良いが)を真直ぐ詰 めたところが最低コルなのであろうか。だから此処は、ただ少し草付きの東稜の下部といっ た感じであった。一気に展望が開け振り向けば前穂岳北尾根と雪渓のカー ルの景観は今 まで見た中で最も素晴らしく感激だ。先のガレ沢を詰めた位置(最低コル) 辺りから南岳、 槍ヶ岳方面から東鎌尾根に常念岳が見渡されて暫し見とれる。

巨岩が堆積したというか乱暴に積み上げられたような岩稜を越えていくと先行パーティが見えた。初心者をつれてい るのかアンザイレンしていた。岩稜を忠実に越たり、鞍部でははっきりした踏み跡を辿りながら進むと、いよいよゴジ ラの背の核心部に着く。先行組は直ぐ目の前にいた。此処で、ハーネスを付けておく。切り立った最初のナイフエッ ジを通過すると今度は手前がスパッと切れ落ちたピナクルに出た。目の前の壁にシュリンゲがぶら下がっていたの で、これを利用して前方の岩壁に乗り移ろうとしたが大股開きになり重心移動ができないとぶら下がりになりそうな ので止めた。一段降りて狭い位置で確りホールドを掴みながら前壁に移って登った。高度感はあるが、殆んど下は 見ずにホールドは豊富なので三点確保を守り着実に登った。横尾谷側に廻りこんでいくと幅10cm程のナイフエッジ となる。アリの戸渡りだと表現したい箇所である。しかし左右下部には薄い足掛りがあり、 エッジに手を掛けて横向 きに渡る。ゴリラの背の終わりは問題のコルへの下りだ。ガイドブックにはアンザイレンしている写真が多いが此処 までザイルを使用せずにきた。本当は使うべきであったのか?・・・後ろに続く井山さんの行動も問題なく感じたし声 も掛からなかった・・・此処はクライムダウンではなく、アプザイレン(懸垂下降)が安全だと言われてきた箇所である 横尾谷側へは残置シュリンゲがあり、2段になっているのでクライムダウンでなんとか下りられそうだが、ここはやは り稜通しに下りようとすると、支点の先は2m位尖った岩があり、その先から切れ落ちている。フエースは横尾谷側に 向いているのでアプザイレンだと振られるしザイルがあちこちの岩角に引っかかりそうである。従ってザイルを使っ  てのクライムダウンとした。古閑さんが確保し先ず川野、次に井山さんが下りた。最後の古閑さんは横尾谷サイドを アプザイレンで降りた。使った支点のシュリンゲはダブルで1本はほぼ新品の残置なのでそのまま利用した。

降り立ったコルからまた岩稜の登りで大きい岩ゴロゴロのピーク を二つこえなければならない。 北穂小屋の前に立ちはだかるピ ークがあまりにも大きくこれは巻くのかと北穂沢側に廻ったが不 明なのでガイドブックを見ながら戻り、岩稜を直進していくと思っ たより早く大ピークに立てた。するともう目の前が北穂小屋であ  った。小屋下の石積みを右へ廻り込んで小屋へ着いた。ゴジラ  の背をやれたぞ!・・・ 満足感で一杯、抱き合ってお互いを祝  福した。 初めての本チャンであったが特に緊張したり、どきどきしたり、  その他の心配をすることもなく、比較的冷静に行動できたことを 自分自身不思議に思っている。 こうして未知の岩稜を我々だけで登れたのは、山路会にお世話 になり、岩・沢の講習等で受けた先輩諸氏のご指導の賜物と感 謝しています。